決死の覚悟 エトピリカ(絶滅危惧種)

野鳥の世界 エトピリカ

美しい大きなくちばしを持つ、エトピリカという鳥さんがいます。ウミスズメの仲間の野鳥で、夏季に北海道東部の一部の島で観察することができるようですが、約30羽程度と非常に数が少なく、日本では絶滅が危ぶまれています。

今回は、このエトピリカのお話です。

「エトピリカ」とは不思議な響きを持つ名前です。アイヌ語で「美しいくちばし」という意味だそうです。数十年前は約数百羽のエトピリカが北海道東部に飛来していたそうですが、漁業用の定置網にひっかかり、大量死してしまったそうです・・・。現在は、わずかのエトピリカが繁殖のため、訪れるだけとなってしまいました。

さて、このエトピリカに出会うにはどうしたらよいでしょうか?あわよくば岬から見えないかなーと、まずは霧多布岬から覗いてみることに。しかし、海上は一面の霧に覆われており、何も見えません・・・。夏にもかかわらず、冬の気温?と思うほど寒い!です。
霧がはれると見えるかも?と思い、売店のおじいちゃんに「霧がはれることはありますか?」と尋ねてみると「夏はずっと霧ばかりだねぇ。霧多布だから!」とのお返事が。名前の由来の通り、霧の多い霧多布岬からの観察は難しいようです。ここはやむなく断念!

北海道18
2012年7月 北海道東部 霧多布岬(湯沸岬) エトピリカの姿は見えず・・・

翌日、ユルリ島、モユルリ島付近をめぐるクルーズ船を予約していたので、いざ出港!ところが、出発間際に雨が降り出してしまいました。午前中は晴れていただけに、雨具の用意はしておらず、あーちゃんの服と靴は防水なので、まぁいいとしても、たーさんの方は防水ではないため、雨カッパを買って、船に乗り込みました。
が・・・雨はひどくなる一方で、双眼鏡もカメラもたーさんもビショ濡れとなってしまい、たーさんはクルーズ中の約2時間半、ひたすら寒さと戦い続けていたため、ほとんど動けず。
ここは、あーちゃんが頑張るしかない!と揺れる船の上から、濡れるカメラを拭き拭き、写真を撮ることに。途中、何度か海に落っこちそうになるわ、船酔いで吐き気はするわ、寒いわで、さんざんな状況に陥りつつも、海の上にはたくさんの水鳥がいて、その光景は圧巻でした。

ユルリ島、モユルリ島付近に船が近づいた際、チラホラとエトピリカが姿を見せ始めました。エトピリカの体長は約40cmあるので、いると識別は可能ですが、暗い、揺れる、で写真を撮らせてもらうのは、なかなか大変です。遠くで飛翔しているエトピリカを何とかパシャリ。

エトピリカ1
2012年7月 北海道根室市 ユルリ島、モユルリ島付近 エトピリカ

雨は相変わらず降り続けています。カメラが壊れないか心配・・・だけど、エトピリカの姿を撮らせてもらいたいので見かけるたびに頑張ってパシャリ。

エトピリカ2
エトピリカ(夏羽)

エトピリカは魚類、イカ類、甲殻類などを捕食するそうで、潜ったり浮いたりを繰り返しています。しばらくすると、船の下からエトピリカが現れ、目の前に浮いてくれました!

エトピリカ3
目の前に現れたエトピリカ。赤いくちばしがきれいです!

夏羽のエトピリカの頭には、きれいな飾り羽があります。

エトピリカ4
黄金色の飾り羽

ガイドさん付のクルーズだったので、ガイドさんからいろいろお話を聞くと、エトピリカは霧が多く、人が近づけないような場所をあえて繁殖地として選んでいるそうです。陸地にあがるのは、産卵の時期だけで、あとはずっと海上生活をしているそうです。エトピリカが繁殖地に現れるのは5月か6月~8月頃まで、ととても短いです。

エトピリカ5
他の海鳥と一緒にプカプカと浮いているエトピリカ(右側の2羽)

後から調べて分かったのですが、根室の夏は、日本の平地では最も気温が低く、しかも霧に覆われていることがほとんどだそうです。エトピリカ観察時は、おそらく10℃ないぐらいの気温でしかも雨、霧も出ていて、「なんじゃ、このひどい気候は!」と思ったのですが、そういう場所だからこそ、エトピリカが繁殖地に選んだのだと、理解できました。過酷と思える環境を上手に利用するエトピリカ。海上の野鳥たちって逞しいですね。

クルーズ終了後、低体温症でダウン寸前だったたーさんは、「俺を殺す気か!」とさんざんあーちゃんに八つ当たりをしていました。エトピリカに出会うには、こちらも「決死の覚悟」が必要、ということですね。

エトピリカ6
君に会うのは、本当に大変でした!

あーちゃんの方は、船酔いの後遺症に悩まされることに。
エトピリカのかわいらしい、おみやげを見ただけでも、「うっ」と胃のムカムカがこみあげてきて吐き気をもよおすのです。エトピリカの卵のおみやげ、バッグのおみやげ、ぬいぐるみのおみやげなどを見るたびに「うっ」と・・・。

エトピリカ7
記念にエトピリカのぬいぐるみを購入。でも、見るたびに吐き気が・・・。

次のクルーズは、当日の天候を見て、霧がなく晴れていて、風がなく船が揺れない日であれば、また乗ってみたいなーと思います。が、短い滞在期間中、そんな条件のよい日っていうのは、あまりないですかねー。やはりどんな悪天候でも決死の覚悟があれば大丈夫、かな?

定置網にはくれぐれも気をつけてくださいね、エトピリカさん!また、お会いしましょう!チュ!

<余談>
漁業の影響により、日本では著しく生息数が激減してしまったエトピリカ。クルーズの際も定置網をみかけ、「今の時期は、時しらず(若いサケ)を捕っているんですよ」とガイドさんが言われていました。確かに、時しらずは美味しいですが、そのためにエトピリカが命を落としてしまうのだったら、全然食べなくてもいい!です。
エトピリカは人間との共存の難しさを改めて思い知らされる鳥さんでした。

<エトピリカを脅かすもの>
繁殖地の餌の不足:子育てができなくなります。
漁業用の定置網:網にひっかかり、命を落としてしまいます。
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たまには気晴らし アカヒゲ(絶滅危惧種)

野鳥の世界 アカヒゲ

生息数が少なく、絶滅が危ぶまれている日本の固有種、アカヒゲ(天然記念物)。今回はアカヒゲのメスに出会った際のお話です。

アカヒゲは南西諸島の一部の島と長崎県の男女群島にしか生息していないといわれており、奄美大島には留鳥として生息するアカヒゲがいます。さて、奄美大島の森林でアカヒゲに出会うことができるでしょうか。

アカヒゲは薄暗い森林に生息するため、見つけるにはオスの美声だけがたよりです。オスの鳴き声が響き渡っているのですが、姿は見えません。このあたりから聴こえるのだけど・・・と目を凝らして下の方を探しますが、なかなか見つかりません。アカヒゲは地表に近い場所に営巣するため、地面をぴょんぴょんと跳ねていることが多いため、今回も下ばかり探していました。

ところが・・・今回は、何と木の上の方の枝にアカヒゲが止まっていました。地表から数メートルはあります。たまたまたーさんが発見したのですが、思いがけない所にいたため、驚きました。

アカヒゲ3
2012年5月 鹿児島県奄美大島 北部の森林 アカヒゲ

このアカヒゲは喉部分に黒い模様がないため、メスです。アカヒゲは上面の赤茶色がきれいですが、薄暗い森の中だとあまり目立ちません。細かい枝をくわえていますが巣材かな?

アカヒゲ4
「森の中だと目立たないのよ!」

普段は地面に近いところにいるのに、木の上の方に出張することもあるのですね!見上げてばかりではなく、たまには上から見下ろすと、きっと気晴らしにもなるはず。

アカヒゲ5
「たまには、見下ろすのもいいわね」

このアカヒゲのメスは、しばらくの間、姿を見せてくれた後、どこかへ行ってしまいました。きっとこの近くに巣があるのでしょう。
ようやく出会えたアカヒゲ(メス)さん、天敵のマングースなどにみつからないよう、頑張って子育てをしてくださいね!チュ!

<余談>
生息数が激減している野鳥たちに共通しているのは、あまり安全でない場所に営巣している、ということのように思います。つまり、子育てが順調にいっていない?

一昔前なら、森林の破壊もなく、外来種もおらず、安心して子育てができていたことでしょう。ところが、今はいたるところ、危険だらけ。けれども、彼らの営巣方法は、昔から変わっていないのです。

もっと安全な場所に営巣すれば生息数も回復して、と思うのですが、遺伝子にインプットされた情報をそんなに簡単に変更できるはずはないですし・・・。しかも他のエリアには、他の野鳥が生息しており、うまく棲み分けができているでしょうから、勝手に侵入するわけにもいかないし・・・。
微妙なバランスで成り立っている生態系の中で、頑張って生き続けている絶滅危惧種の野鳥たち。この世から彼らの姿が消えてしまう、なんてことがないよう、見守っていきたいです!

アカヒゲの関連記事:
縄張り争い中のアカヒゲ(オス)の記事「美声は罵声 アカヒゲ(絶滅危惧種)」はこちら
沖縄本島北部に生息するホントウアカヒゲの記事「美声にうっとり ホントウアカヒゲ(絶滅危惧種)」はこちら

<アカヒゲを脅かすもの>
森林破壊:生息地が減少するようです。
マングース、野猫:ヒナを捕食しているそうです。

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派手な寂しがり屋 オグロシギ

野鳥の世界 オグロシギ

赤褐色の夏羽がきれいなオグロシギという鳥さんがいます。大型のシギの仲間の野鳥で、繁殖地はユーラシア大陸中部~北部、越冬地は東南アジアやオセアニアといわれています。日本では春と秋の渡りの時期に少数のオグロシギを観察することができるようです。

今回は、このオグロシギのお話です。

早朝の干潟で、赤っぽい大きめの野鳥が採餌していました。「誰だろう?」と、観察していると、尾羽が黒いことに気づきました。オグロシギです。尾が黒いので、オグロシギ!

オグロシギ1
2012年5月 鹿児島県奄美大島 大瀬海岸 オグロシギ

オグロシギは全長約38cmもあり、見ごたえがあります。

オグロシギ2
足が長い!

オグロシギの夏羽は赤っぽく、とてもきれいです。遠くからでもかなり目立ちます。このオグロシギは濃い赤褐色なのでオスです。(メスは色味がもっと薄い)

オグロシギ3
オグロシギのオス(夏羽)

足が長く、くちばしも長いオグロシギは、水が深いところでもジャブジャブ入って、採餌することができます。大型のシギならではのメリットですね。

オグロシギ4
深いところでも採餌できるオグロシギ

オグロシギのお尻ショットはこんな感じです。

オグロシギ5
名前の由来の通り、尾が黒いオグロシギ

非繁殖期のオグロシギは小群で行動するそうですが、この時みかけたオグロシギはお一人様でした。たった1羽だと心細いのか、アオアシシギにべったりでした。

オグロシギ6
オグロシギ(左)、アオアシシギ(右)

オグロシギは、甲殻類やゴカイ類、昆虫やミミズなどを捕食するそうですが、このオグロシギは、食べる時もアオアシシギのそばで採餌していました。

オグロシギ7
カニを捕らえたオグロシギ

せっかく捕らえたカニをアオアシシギに奪われないかと思うのですが、そんなことはありませんでした!オグロシギとアオアシシギは結構、仲良しのようです。オグロシギの方がアオアシシギより一回り大きいのですが、同じ大型のシギということで、近くにいると安心するのかも?

オグロシギは繁殖地であるユーラシア大陸に向かう途中、この海岸に立ち寄ったようですが、ほぼ目的地が一緒のアオアシシギたちとどこまで行動を共にするのでしょうか。途中まで一緒に旅をしたりすることもあるのでしょうか。

オグロシギ8
「ねぇ、君!いつまで一緒にいてくれる?」 オグロシギ(左)

見た目は派手だけど、ちょぴり寂しがり屋?のオグロシギさん。アオアシシギと仲良く北の繁殖地目指して旅立ってください、お元気で!チュ!

<余談>
同種同士でも争いが絶えず、他の野鳥と仲良くできないジャイアンのような鳥さんもいれば、種は違っても一緒に行動できる気の優しい鳥さんもいます。オグロシギやアオアシシギはそんな気の優しい野鳥の一種なのだなーとつくづく思いました。

さて、人間はどちらの種に属するでしょう?
どちらかというとジャイアンに近い性質の人が多いような・・・。破壊や戦争がなくならないのは、ヒトという種が持つ性質のせい?もちろん、中には慈愛あふれる立派なヒトもたくさんいますが。

シギたちのように気の優しいヒトがもっと増えれば、よりよい世の中になるのかも?

<オグロシギを脅かすもの>
湿地・干潟・水田・湖沼の減少:生息場所がなくなります。繁殖地、越冬地の両方の環境が整っている必要があります。

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スリム体型がご自慢 アオアシシギ

野鳥の世界 アオアシシギ

スマートな体にスラリとした長い足が特徴のアオアシシギという鳥さんがいます。大型のシギの仲間の野鳥で、繁殖地はユーラシア大陸北部、越冬地はアフリカや東南アジア、オセアニアといわれています。日本では春と秋の渡りの時期、南西諸島では冬季も観察することができるようです。

今回は、このアオアシシギのお話です。

早朝の干潟には、たくさんの野鳥が食事をしにやって来ます。旅先の干潟で、次々と舞い降りてくる野鳥たちをワクワクしながら眺めていると、数羽の白っぽい野鳥たちが目に入りました。

干潟は広く、双眼鏡での識別でもかなり難しいため、写真を撮って確認します。この野鳥たちは・・・アオアシシギでした!

アオアシシギ1
2012年5月 鹿児島県奄美大島 大瀬海岸 アオアシシギ(夏羽に換羽中)

アオアシシギは4羽います。1羽のアオアシシギはお一人様で食事中です。

アオアシシギ2
お一人様のアオアシシギ(夏羽に換羽中)

このアオアシシギたちは2羽でぼぉ~としています。

アオアシシギ3
ペアのアオアシシギ(冬羽)

残り1羽のアオアシシギは、何故かオグロシギと一緒にいました。

アオアシシギ4
オグロシギ(右)と一緒のアオアシシギ(左)

アオアシシギの体長は約35cm、足の色味が青みがかっているため、アオアシシギという名前が付けられています。足が黄色いキアシシギ、足が赤いアカアシシギ(絶滅危惧種)、と同じくアオアシシギも単純な名前となっているのですねー。

アオアシシギは水生昆虫や甲殻類などを捕食するので、この干潟でも他の野鳥と同じくたくさん食べるのでしょうが、アオアシシギはとてもスリムに見えます。努力もせず、スマートな体型とは羨ましい限り。

アオアシシギ5
スリムなアオアシシギ(夏羽に換羽中)

奄美大島では、越冬しているアオアシシギもいるようなので、このアオアシシギたちは、この場所で越冬していたのか渡りの途中だったのか定かではありませんが、この後、北方の繁殖地に向けて、旅立ったことでしょう。
次は、いつ、どこでスリムな姿を見せてくれるでしょうか?お元気で、アオアシシギさん!チュ!

<余談>
多くのシギの仲間は南方で越冬し、北方で繁殖するので、非常に長距離を旅することになります。何故に北方まで行って子育てをするのか?と思うのですが、夏の北の大地には、食べ物がとても豊富にあるため、子育てに適した環境となっているからです。

春は北へ向けて、秋は南に向けての移動を繰り返す彼らは、とっても忙しい生活を送っていることになりますねー。人間の世界では、年々怠け者が増えているように思いますが、野鳥たちはとっても働き者なので感心させられます!

<アオアシシギを脅かすもの>
干潟・水田・湖沼の減少:生息場所がなくなります。繁殖地、越冬地の両方の環境が整っている必要があります。

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プロフィール

あーちゃん

Author:あーちゃん
バードウォッチング(探鳥)を通して、自然保護(環境保護)の重要性を痛感。天然記念物(絶滅危惧種)の野鳥や個性豊かな鳥さんとの出会いを独自の目線で紹介していきます。

埼玉県在住。
家族:たーさん(旦那)、ふーちゃん(鳥)

あーちゃんは、専門家ではありません。したがって、このサイトの記載内容については、正しくない可能性がありますので、あしからず。また、写真の綺麗さを追求し、紹介するサイトではありませんので、ご注意を!

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